横浜で変態を肯定された夜 

私は30代後半になってから、初めての出会い系サイトミントC!Jメールに登録しました。

 

普通の恋愛や結婚生活の中では満たせなかったものが、ずっと胸の奥に燻っていたからです。

 

日常生活では真面目に働き、誰からも「常識的な人」と見られている自分が、裏では「もっと支配されたい、もっと変態的な自分を曝け出したい」と願っていることを、誰にも言えませんでした。

 

だからこそ、そのサイトにプロフィールを載せた時の緊張感と高揚感は、今でも忘れられません。

 

最初にメッセージをくれたのは、同年代の男性でした。

 

文章は丁寧で落ち着いていましたが、ところどころに「あなたはどこまで受け入れられますか?」と問いかけるような一文がありました。

 

その言葉を読んだ瞬間、胸の奥でずっと隠してきた願望が揺さぶられる感覚がありました。

 

「私は変態だ」と、認めざるを得ない気持ちになったのです。

 

実際に会う約束をした日、待ち合わせ場所に向かう足取りは重くもあり、軽くもありました。

 

普通の恋愛であれば、外見や会話の相性を気にするところでしょう。

 

けれどこの時の私は、それ以上に「自分の倒錯を受け止めてくれるかどうか」がすべてでした。

 

会った瞬間、相手の視線は静かに、しかし確かに私の心を見透かすようでした。

 

その目に見られた途端、自分が普段どれほど「従順になりたい」と願ってきたかを痛感し、身体の奥から熱がこみあげてきました。

 

食事をしながら会話をしましたが、話題は普通のもの――仕事や趣味、日常のことでした。

 

けれど私は、心の中で「この人に見抜かれている」という感覚を強く抱いていました。

 

何気ない会話の合間にふと沈黙が訪れると、まるでその沈黙自体が私を試しているかのようで、背筋に震えが走りました。

 

私は普通の女性でいるふりをしながら、内心では「もっと従わせてほしい、もっと恥をかかせてほしい」という倒錯的な欲望が膨らんでいくのを止められませんでした。

 

その夜、私は日常の自分を完全に裏切りました。

相手は派手なことをしたわけではありません。

 

ただ、私の弱さを突くように言葉を選び、時折こちらの反応を楽しむように笑いました。

 

その一つひとつが「自分は変態なのだ」という事実を突きつけてくるのです。

 

普通なら恥ずかしさで逃げ出す場面でも、私はむしろ安心していました。

 

なぜなら、ようやく自分の本性を受け入れてくれる人に出会えたと感じたからです。

 

終わった後、私は混乱していました。

 

満たされた安堵と、後ろめたさが同時に押し寄せてきたからです。

 

けれど不思議なことに、その後悔はすぐに「また会いたい」という欲望に変わりました。

 

私は完全に自分の変態性を自覚し、それを恥じるよりも「これが私なのだ」と受け入れられるようになっていました。

 

SMの世界は、誰にでも理解されるものではありません。

 

30代、40代、50代という年齢になってから、自分の倒錯を自覚することは「今さら」と思われるかもしれません。

 

それでも、私はあの出会いを通して「変態である自分」を誇れるようになりました。

 

日常では隠して生きるしかない一面を、誰かに肯定されること。

 

それは若い頃の恋愛よりも、ずっと深く心を揺さぶり、満たしてくれるものでした。

 

今振り返って思うのは、私のように「普通では満たされない」と感じている人にとって、このような出会いの場は必要だということです。

 

変態性は恥ではなく、正直に向き合えば大人の人生を豊かにする一部になり得る――そう実感しています。

 

そして何より、あの出会いは「変態」という言葉の重みを、否定ではなく肯定として教えてくれました。

 

隠すのではなく、受け入れてこそ大人の自由があるのだと、今では胸を張って言えるようになったのです。

 

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